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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和30年(く)6号 決定 1955年8月25日

本籍並住居 富山県○○市○○○○番地

少年 トラツク助手 山川長男(仮名) 昭和十二年六月十一日生

抗告人 附添人弁護士

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由の要旨は、「少年は友人に誘惑されたため、誤つて原審認定の如き非行を敢てするに至つたものであつて、決して主謀者でなく、従つて、その犯情は極めて軽微であるのみならず、保護者には十分な監督能力があり今後は少年を厳重に監督し、再び斯る非行を反覆させない旨誓つて居る状況である。しかるに少年を中等少年院に送致する旨決定した原審の処分は、前記の如き状況を看過したものであり、苛酷に失するものであつて、著しく不当であるからその取消しを求むべき本件申立に及ぶと言うにある。

よつて記録を検討するに、原審少年調査官作成昭和三十年七月二十一日付調査票の記載、少年鑑別所(鑑別担当者有沢宏)の昭和三十年七月二十一日付鑑別結果通知書の記載等に依れば、少年は昭和二十七年七月二十三日富山家庭裁判所高岡支部に於て窃盗の非行に依り審判不開始処分に、昭和三十年一月十四日同庁に於て窃盗の非行に依り保護観察処分に各附せられた前歴を有し、しかも本件所為は共犯者と共に夜間他人の住居に侵入し、衣類、酒類、食料品煙草等を、相当多量に窃取したものであつて、仮令少年に於て右犯行の主謀者でなかつたとしても、少年の性格中には、相当高度に反社会的なものを包懐していることを認め得べく、また、前記の資料によれば、保護者たる父は業務の都合上、少年を十分に監督することが出来ず、毋にもまた監督能力が不足して居り、家庭に於て保護処分を受くる適格を欠くため、少年の性格を矯正し、その社会復帰を図るには、家庭以外の場所に於て相当強力な措置を講ずる必要があることを認め得る。そうして見れば、少年に対し中等少年院送致の決定をした原決定は、まことに相当であつて、論旨は理由がないからこれを棄却すべきである。よつて少年法第三十三条第一項少年審判規則第五十条に則り主文の通り決定する。

(裁判長判事 成智寿郎 沢田哲夫 岩崎善四郎)

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